ビルさんに無理矢理抱えられ、裁判所から連れ出された。
外は変わらず住人たちが荒れ狂い、動物たちは鳴き叫ぶ。
悲しみの声が響く国。
「…私がこの国を壊した。」
思わず零れた言葉は誰にも聞こえるはずもなく
ただ、空気と化して消える。
ゴーン ゴーン
鐘は鳴り響く。
アリス! アリス!
アリス!! アリス!
「狂った者たちは元には戻せない。生まれ変わり、また新たな個体として誕生する。
同じ役割と名を持ち、この世界に居続けるしか我々には選択肢がない。
だがアリスは違う。
アリスが死ねば新たなアリスがやってくる。
そして新たなアリスが死ねばまた新たなアリスがやってくるのだ。
しかし今回は違った。
ありすのせいで全ては狂った。」
ただ淡々と説明をするビルさんには感情が無いようだった。
「半端なありすのせいで国の循環は乱れた。生まれ変わることができなくなった。一度アリスに選ばれたありすが、未熟だった為に元の世界に戻ったからだ。
変わりのアリスを連れてきても無駄だった。既に黒兎が狂い始めていたからな。」
やはり私が原因だった。私が皆に好かれていたくて、皆は私を愛していると自惚れていたから。
アリスという立場に溺れた私はこの国の秩序を壊した。
「責任を取れ、とは言わない。貴様はアリスだからな。私ももう逆らうことは出来ない。だが一つだけ忠告をしておく。
猫に騙されるな。自分を信じろ。」

