嗚呼。そうだった。
何で忘れていたのだろう。
『チェシャ猫。あんまり酷いことを言ってはいけないよ。まだ子どもなんだ。
ありす、君も分かっただろう?今の君に居場所はない。
此処での記憶を消してあげるから、元の世界へ戻りなさい。
黒兎に案内を頼んでおくから。』
黒兎、という名前を聞いて、チェシャ猫の反応が変わる。
「待てよ!!!案内は俺の仕事だ。ありすを案内するのは俺だ。黒兎の仕事じゃない!!」
ありすの腕を掴み、無理矢理連れ出そうとするチェシャ猫の顔は怒りではなく悲しみだった。
『君はもう案内、つまり【導き】が出来ないだろう?黒兎に任せて、君は帰りなよ。』
ピク、と耳を動かし、首を横に振る。
「ちがっ…出来ないわけじゃない!!俺はっ…」
『僕が連れて帰るよ。』
黒兎さんが遠くから告げる。
距離はあるのに耳元で囁かれたかのように耳は熱くなる。
『僕がありすを連れて帰る。そしてアリスになった時、君に招待状を送るよ。
【猫が迎えに上がります。】ってね。』

