「私は、アリスだけを見続けてきました。一目見た時から、アリス…貴女だけを見続けてきました。」
落ち着いて話しだすクローバーさん。
静まり返る森がとても不気味で…。
何かが起こる、と誰もが予感できた。
「一瞬でした…
一瞬で、私は貴女の虜になりました。
まだ幼い少女だったのに、これまで感じたことのない魅力がありました。」
私に、魅力 ?
「愛しい、と思いました。
恋しい、と思いました。
最初は、貴女に会えるだけで満足でした。
ですが…」
表情が強張る。
緊張感が走る。
「貴女は帰ってしまった。
私は…許せませんでした。」
「私の、ことが…?」
「違います。」
違う?
私が帰ったこと以外に許せないことって…?
「貴女が帰り、すぐに代わりのアリスが来たのです。
連れてきたのは…
黒兎、でした。」
ドクン
胸が、痛かった。
「私は許せなかった。
何故、代わりのアリスを連れてきたのか。
私は黒兎に詰め寄りました…
彼は、私にこう言ったのです。」
そのときの光景を思い出しているかのように遠くを見やる。
「彼は…黒兎は言いました。
『あの子はこの国を救えない。』と。」

