─ Alice ?─




「…アリス?」


クローバーさんが心配そうに顔を覗きこんでくる。


私、きっと酷い顔してただろうな。




「…私、きっと怖いんです。」


きょとん、とするクローバーさんたち。

「怖い、のですか?」



「怖いんです。嫌われることが。皆が離れていくことが。私は、私は…」





求められることが


嬉しかった。





皆が私を求め、皆が私に夢中で。


私だけが特別で、私だけがアイサレル。



この国の全てが





ア リ ス を求めている。




「私、私は…」



「落ち着きなさいアリス。大丈夫です。
誰も貴女を責める者はいませんよ。
愛されたいと願うのは人間の本能、仕方のないことです。」




珍しく真面目にスペードさんが答える。



仕方がない、か。



「アリス。貴女は何も心配しなくて良いのですよ?
誰も貴女を嫌ったりするはずがありません。




嫌うことなど、許されません。」


許 さ れ な い ?





「許されないって…」


決まりだから?理だから?
この国ではアリスが絶対的存在だから?



ア リ ス だから?


私がアリスじゃなかったら



誰も私を愛していない ?



誰も私のことを必要としてくれないの?



ねえ、黒兎お兄さん。
どうして私をアリスにしたの?