「ぼ、帽子屋さんっ!!」
無意識に呼びかけていた。
このままではいけない気がした。
根拠なんてないけれど。
「…?」
「貴方を選べなくてごめんなさい…
でもありがとう。」
あ り が と う 。
私を好きになってくれて
私を愛してくれて
私を 私だけを 見てくれて
あ り が と う 。
「アリス…貴方って人は…」
クスリ、と笑い、優しく微笑む帽子屋さんの瞳はとても綺麗だった。
私、帽子屋さんと出会えてよかったよ。
沢山怖い思いしたし、
大嫌い、と思ったりしたけれど
貴方の優しさは本物でした。
「…ありがとう。アリス。
貴女を愛せてよかった…。」
帽子屋さんは去っていった。
薔薇の香りを残して
私の前から 去っていった。