─痛い!
─どうしたの?アリス。
─薔薇さんに刺されたあ!
─アリスがむやみに触ろうとするからだよ?
─だって綺麗なんだもん
特にこの薔薇さん!きらきらしてるの!!
─そっか。じゃあ、名前を付けてあげたら?
─名前?
─そう。僕がアリスに付けたみたいに…きっと喜ぶよ。
─うん!えっと…んーっと…
帽子屋さん!
─え?どうして?
─薔薇の影がね、帽子を被ってるみたいなの。
それで、周りの薔薇さんの
中心にいるでしょ?
だから帽子屋さん!
─んー…名前というかなんというか…
─えー…あ、じゃあマッド!
─どうして?
─不思議の国のアリスでは
帽子屋さんのことを
マッドハッターていうの。
だからこの薔薇さんはマッド!─
そう。きっとあの時から
私は貴女を愛してしまった。
貴女がいなくなり、
代わりのアリスがいくら来ても
満たされなかったこの気持ち。
愛されても満たされることは
一度もありませんでした。
貴女に名を頂いたあの日から
私は帽子屋として生きていくことになったのです。
望んでなどいませんでした。
私は、世界で一番美しい薔薇でいたかった。
「アリス。貴女のせいで私は…」
思わず口から零れた言葉。
ピク、とアリスは反応をする。
「…ごめんなさい。」
何に対して謝っているのか、
きっと本人もわかっていないのだろう。
ただ、無気力に言葉を発する。
「…ごめんなさい。」
違う。
違う違う違う違う!!
こんなの私が欲しかったアリスではない…
私が欲しかったアリスは…
もっとキラキラとした
もっと笑顔が素敵で
私を見てくれた
そう あの頃の ありす。

