「い゙ッッッ!!!?」
帽子屋さんが、
パッといきなり手を離してしまった為
私は思い切りお尻から
地面に落下してしまった。
「い゙だい゙。
いきなりなにするの…ひゃあ!!」
視界には帽子屋さんしか
映らないほど近距離。
アメジストの瞳は
憂いを帯びたように妖しく、
大人の色気が漂っていた。
「アリス。
貴女は私には逆らえないのです。
私は、薔薇を操ることができる…
つまり、貴女の大切な者共を
簡単に殺すことができます。
御存知でしょう?
先代のアリスの成り行きを…
貴女を殺すことだって
容易いことなのです。」
分かってる。
帽子屋さんにとって私なんて
只の栄養液でしかないことなんて。
私を殺すことだって
赤子を捻るようなもの。
わかっている。
わかっているけれど…
「…私は、貴方の
言いなりにはならないわ。
私にはするべきことがあるの。
記憶を取り戻して、
黒兎さんを助ける。
そして、チェシャ猫を元に…」
元に戻す。そう言いかけた時
今までに感じたことのない
恐ろしい殺気を感じた。
「本当に貴女という人は…。
一度痛い目に合わないと
わからないようですね。」
表面だけで笑う帽子屋さんからは
恐怖しか感じられなかった。
それでも、助けたいの。
こんな所で諦めるわけにはいかない。
「私はっ…きゃあ!!」
蔓に足を引っ張られ
ズキ、と足が痛む。
「痛! あ…帽子屋さ「ならば私を殺して下さい。」
帽子屋さんは、私に覆い被さり
私の手首と自らの手首を
蔓で繋ぎ締めていた。
「私を殺して下さい。
そして血を、肉を、骨を…
全て、全て、貴女の体に受け入れて。」
ゾクッ
「それって…どういう…」
「私のアリスにならないのであれば
私がアリスの私になるしかないのです…
貴女の体内に私がいる…
嗚呼、考えるだけでゾクゾクします。」

