─ Alice ?─




頭がぼーっとする。


認識できることといえば
私は帽子屋さんに
抱えられているということ。

そして、きっと血だろう…
鉄の匂いが鼻につく。



ディーとダムは…
二人はどうなったのだろう…


ふと瞼を開け、地面を見るが
そこには血一滴落ちていない。

周りを見渡すが、
ただ一輪の薔薇が咲いているだけ。

二人の姿は見当たらない。


あんなに血だらけだった二人が、
まともに移動できるとは思えない。



「おや、アリス。お目覚めですか?」


いつものようにニコリ、と笑い
何事もなかったかのように歩きだす。



可笑しい。


「…帽子屋さん。


ディーとダムはどうなったの?」



私が眠っていた間に何かがあった。
そうとしか考えられない。


血の匂いがするのに
血一滴落ちていない…


何か、隠している。




「…双子のことはお忘れなさい。

アリス、貴女は私の【 モノ 】です。
私以外の者に気をとられているならば…



お仕置き、ですよ?」




クスリ、と笑いながらも瞳は冷たく、
とてつもない危機感を感じた。




逆らえば殺す。



そうとしか受けとれなかった。


「アリス、貴女は自分の立場を
よく理解していないようですね…
私が一から丁寧に
お教えいたしましょう…」