消された記憶…─
やっぱり私、ここの人たちとの
記憶がないんだ。
会ったことあるのに
話したことあるのに
どうして私だけ記憶が…?
「しっかし女王も
ここまでするとは…。
よほどそなたを誰にも
渡したくないのだな。
それとも逢わせたくない奴でも
おるのかもしれんな。」
クスリ、と意地悪く笑い
私を横目に見る。
本当は知っているのだろう
ワザと、私に考えさせるような
物言いだ。
「逢わせたくない奴って…
黒兎さん、ですか?」
アリス剥奪で捕らえられた黒兎
また奪うかもしれない
危険人物と、【 アリス 】を
逢わせたがる人なんて
いないだろう。
「はは!!アリスは勘が鋭いな。
女王は黒兎が邪魔なのさ。
何故だと思う?」
そういえば何故だろう?
抑制能力を持っているから、と思っていたけれど…
アリスへの欲を抑制するのであれば女王様だって抑制されるはず
ならどうして?
どうして黒兎がいてもなお、
アリスを求め続けたの?
「……分からない。」
全く分からない。
謎だらけだ。
「女王には他の住人にはない、
欲求があった。
何を手に入れても満たされることはなかった。
どうすれば満たされるのか…
女王は考えに考え、
思いついたのだ。
皆が愛してやまないアリスを
自分だけの【モノ】にすれば
きっとこの欲求は満たされるに
違いない、と。」

