俺のように魔力がある訳でも、ティリスのように魔法が使える訳でもない。なのに不特定の誰かのために全身を血に染め、苦痛に呻いても決して止まろうとはしない。

 それでいて、時には闘いに飢えた目をちらつかせる。

 淡々とした物腰に惑わされ、攻撃的な面が隠されている事に気付く者はほとんどいないだろう。

 こいつはそれを隠しているつもりは無いのかもしれないが。

「少しくらいは信じてやる」

 俺の質問に一瞬だが躊躇いが見えた。それでも答えたのだから、俺の事は少なくともレイノムスよりは信用しているのだろう。

「そうか。ありがとう」

 リュートの口から出た言葉に目を丸くした。

 未だ両者の間には(いく)ばくかの溝はあるようだけれど、それなりの信頼関係は多少なりとも築けているらしい。

 ふいに、入り口のドアがノックされた。