「和奏は私たちの前でもワガママ一つ言わず、いつも『パパお疲れさまです』『ママ、わかなと志乃さんがやるからママ休んで』と私たちを気遣ってばかりだった」
その場面を見たわけじゃないけど、なんとなくその光景が頭の中でよぎった
和奏の実家にはまだ行ったことがないけど、藤咲財閥の規模からすれば大体のでかさはつかめる
その豪邸で小さな和奏が和真おじさんと真由美さんの間でニコニコと笑っている
志乃さんがお茶をと言うと真由美さんが立つ、その瞬間小さな和奏が『わたしがやる!』と真由美さんを制して志乃さんとキッチンに向かう姿
ふっ息が漏れると
「どうした、葵衣くん」

