君のそばに

顔を真っ赤にし、あたふたする私に

嘉賀くんはニコッと笑いかけた。



「さ、帰るぞ。」



嘉賀くんはそう言い、開いていた本を閉じて立ち上がった。




ていうか、こんな時に本読んでたんだ…

以外とマイペースなんだ…





私も嘉賀くんに習い、立ち上がりスカートをはたいた。




「お袋さんに叱られるな。」



ふと嘉賀くんは自分の腕時計を見て呟いた。



「え……?」




私は嫌な予感がした…


左腕に付けた、シンプルな赤色に染まった時計を覗きこんだ。





−21時32分−



……………あれ?



その瞬間、私は鬼のような形相に変わる母親の顔が頭に浮かんだ。

それと同時に寒気がして私は身震いした。




「帰ろう…!…今すぐ…!」



「……!」



私は無意識に
嘉賀くんの手を握って歩きだしていた。




コンクリートの上に溜まる雨水を勢いよく踏み付けながら
私は夜道をひたすら歩いた。




嘉賀くんは私の歩調に合わせて歩きながら、

何も言わず私の手を握り返した。