君のそばに


そして−…




口説いようだが、今日は朝から雨!




にも関わらず、

傘を持たぬ輩がここに1名。




「沙〜矢〜!あんたね〜!
雨が降ってんのに傘がない、ってどーいう事〜!?」


そう…私だ…。

柚は私の方に傘を向けて、勢いよく開いた。

その音に少しビビる私。


「うう……今日は寝坊をしちゃって、運転手さんに送って頂いたんデス……。」

私は大きくため息をつく。




説明が遅くなったが、ここは私立の名門金持ち校である。


ここにいる4人は日本有数の金持ち会社を束ねる長の子供たちである。

まあ、いわゆるご子息、ご令嬢っていうやつだ。


そして、この学校では数少ない登下校に自家用車を利用しない徒歩組である。


「こういう時くらい甘えたって良いんじゃな〜い?
そんくらいで叔母さん怒らないでしょ?」


室内にも関わらず、柚は傘を肩に乗せクルクルと回している。


「う〜ん…わかんないな…」


私のお母さんは金持ちには稀な、子供は甘やかさない主義者である。


例を上げて説明すると、


お小遣は月に4000円。

テストで悪い点をとると鬼のように怒る。(私は毎回、こっぴどく怒られる)

好き嫌いをすると母のスリッパが飛んでくる。…………etc

私は人参が嫌いだ。ガキと言われようが、何と言われようが、これだけは絶対に食べられない。

お小遣もバイトをしていない私としては月に4000円はキツイ。まぁ、大して使わないようにしてるからギリギリ不便はしてないけど…。



「じゃあ、オレん家の車呼ぼうか?」

と、少し心配そうに言う実春。


その言葉に、母の怒り狂う姿が私の脳にリアルに映し出された。


お、恐ろしい…ッ

私は一瞬にして鳥肌が立った。



「…いやいや…!
そしたら、もっと体罰……、…怒られるから!!ダメ!!」



私はそれだけはご勘弁を、という風に手を合わせ、頭を左右に大きく振った。


だって、お母さん本当に怖いんだもん…!