君のそばに


「部長ッ!!」



部長は右手をポケットに入れ、左手を軽く挙げた。

そして一緒になって、
絵を覗きこんだ。


「ふむ…。
流石とでも言うべきかな?
いや、伍棟さんにとっては、当たり前なのかな?」



部長はからかうような瞳で私を見て微笑んだ。


「いえいえ!!
そんな事、決してありません!!
嬉しいです!」


部長は、冗談だよ、と笑った。



彼は3年の武藤 晃(むとう あきら)

いつも優しく真面目な先輩。茶色のサラサラの髪をしていて、いかにも高そうな黒い眼鏡をかけている。


「伍棟さんは我が美術部の期待の星なんですから、これからも是非頑張って欲しいですね。」


「はい!!」


部長は眼鏡を中指でクイッと上げながら言った。



そして、皐月が何か言い足りなそうにしている。目をキョロキョロさせ、口を開いてはまた閉じてを繰り返している。


部長もそれに気付いたのか、部長の体の一部であるかのように眼鏡がキラリと光った。