君のそばに



別荘の時も思ったけど、実春ってこんなにやきもち焼きだった?


いつも一緒にいるときは普通なのに、私が嘉賀くんのことを話すだけで、すぐ膨れる。


そんなに嘉賀くんが嫌いなの?




すると実春が”クソ〜…”と言いながらうなだれた。


「くぁ〜…何かだせー、オレ。しかも恥ずいし。」

「実春…。」

実春は恥ずかしそうに頭を掻き乱した。ごまかそうとしてるみたいだけど、それはバレバレで。



ふと実春が私を見る。

その目が告白された時と同じ、男の人の目で思わず私はドキッとした。


「そうだよ、やきもちだよ。恥ずいから言わせんなよ…。」

「ご、ごめん…。」

反射的に謝る私。自分でも謝る意味が分からない。

けど今はそんなことを思っている暇はなかった。



真剣な眼差しで歩み寄る実春に私は実春から目が離せない状態で固くなる。



そっと肩に熱を感じた。
実春の手だ。




そしてゆっくりと実春の顔が近づいてくる。


あ、キスされるんだ…。


と目をつむろうとした瞬間、

私の目の先に温かい光が漏れる部屋が目に入った。



生徒会室だ!


こんな時間まで生徒会の人も頑張ってるんだな。


…じゃなくて!


もしかしたら、誰か出てくるかもしれないじゃん!
こんな廊下の真ん中でキスしてるところを見られるのは、さっきの痴話喧嘩より恥ずかしい!!



そう思うと私の中のムードが一気に崩れ落ち、気付くと実春の胸を両手で押し返していた。


「沙矢?」

「…とりあえず美術室行ってくるから、そこで待ってて。」


こんな場所でキスを受け入れようとしていた自分に急に恥ずかしくなる。

あ〜暑い。



実春は不満そうにポツンと突っ立ってこちらを見ている。

まるでペットの犬に餌を前に”待て”している気分になる。



私は犬になった実春を想像して笑いながら、生徒会室の前を横切った。






そこで、

誰がいるのかな、とドアごしに中を覗いて見た私は、



見てはいけないものを見てしまったんだ。