君のそばに


2人きりになった途端に無言になったせいか、私と実春の足音が廊下によく響いていた。


実春は嘉賀くんの時とは違い、何か話さないと!って気持ちにはならない。


そういえば、体育祭の準備で誰かが下絵を壊して、その板を嘉賀くんと一緒に持って来たんだっけ。

部長と皐月にハメられて。


部室まで板を持ってくるまで私一人でバカみたいに緊張して、話のネタがない!!って思ってたっけ。

もうあれから、4ヶ月は経ってるんだ。何だか懐かしい。



そう思うと実春は会話がなくても安心して一緒にいられるな。

沈黙してても安心して一緒にいられる人っていいよね。



これが私にとって好き、…っていうことなのかな…。



「なぁ、柚の奴はまだ準備でもしてんのかな?」

「へ?」


ぽつりと実春から出た会話に沈黙が破られる。


「そうなんじゃない?クラスの方には顔を出さなかったし。」

私が考えてた事と実春が考えてた事があまりに違って、私の口から少し笑みが零れる。

何で私が笑い出したのか分からない実春は首を捻る。


そうだよね。
実春は生徒の代表として文化祭の運営をやってるわけだから、いつだって文化祭のことを考えてる。

きっと家でも何の問題もなく文化祭を成功させるにはどうしたらいいか、とか考えてるのかな。


そういえば嘉賀くんも生徒会役員だよね。生徒会以外でも話したりしてるのかな?



「ねえ、家で嘉賀くんと文化祭のこととか話したりするの?」

という私の質問に少し冷めた口調で返事が返ってきた。


「…別に。家じゃ、ほとんどあいつとは喋んねェ。」

「…あ、そうなんだ。てっきり2人共生徒会役員だから、家でもその事について話すのかな〜と思って。」

「ふ〜ん。」


部屋から明かりが漏れるといっても完全に明るいというわけではなく、実春が今どんな表情をしているのかまでは分からなかった。

けど口調からして不機嫌になっているのは分かった。



「…どうしたの?何か怒ってるの?」

「別に怒ってないけど。」


明らかな物言いにイラッとする。



怒ってんじゃん!!

何でそこで否定するわけ!?