二年が過ぎ、
すっかりみじめになっていたひび割れ壷は、
ある日、川のほとりで水くみ人足に話しかけました。
「私は自分が恥ずかしい。
そして、あなたにすまないと思っている。」
「なぜそんな風に思うの?」
水くみ人足は言いました。
「なにを恥じてるの?」
「この2年間、私はこのひびのせいで、
あなたのご主人さまの家まで水を
半分しか運べなかった。
水がもれてしまうから、
あなたがどんなに努力をしても、
その努力が報われることがない。
私は、それがつらいんだ。」
壷は言いました。
水くみ人足は、
ひび割れ壷を気の毒に思い、
そして言いました。
「これからご主人さまの家に帰る途中、
道端に咲いているきれいな花を見てごらん。」
天秤棒にぶら下げられて丘を登っていくとき、
ひび割れ壷はお日さまに照らされ
美しく咲き誇る道端の花に気づきました。
花は本当に美しく、
壷はちょっと元気になった気がしましたが、
ご主人さまの家に着くころには、
また水を半分漏らしてしまった自分を恥じて、
水くみ人足にあやまりました。
すると、彼は言ったのです。
「道端の花に気づいたかい?
花が君の側にしか咲いていないのに
気づいたかい?
僕は、君からこぼれ落ちる水に気づいて、
君が通る側に花の種をまいたんだ。
そして君は毎日、僕たちが小川から帰るときに
水をまいてくれた。
この2年間、僕はご主人さまの食卓に
花を欠かしたことがない。
君があるがままの君じゃなかったら、
ご主人さまはこの美しい花で
家を飾ることはできなかったんだよ。」
(作者不詳・菅原祐子訳)
すっかりみじめになっていたひび割れ壷は、
ある日、川のほとりで水くみ人足に話しかけました。
「私は自分が恥ずかしい。
そして、あなたにすまないと思っている。」
「なぜそんな風に思うの?」
水くみ人足は言いました。
「なにを恥じてるの?」
「この2年間、私はこのひびのせいで、
あなたのご主人さまの家まで水を
半分しか運べなかった。
水がもれてしまうから、
あなたがどんなに努力をしても、
その努力が報われることがない。
私は、それがつらいんだ。」
壷は言いました。
水くみ人足は、
ひび割れ壷を気の毒に思い、
そして言いました。
「これからご主人さまの家に帰る途中、
道端に咲いているきれいな花を見てごらん。」
天秤棒にぶら下げられて丘を登っていくとき、
ひび割れ壷はお日さまに照らされ
美しく咲き誇る道端の花に気づきました。
花は本当に美しく、
壷はちょっと元気になった気がしましたが、
ご主人さまの家に着くころには、
また水を半分漏らしてしまった自分を恥じて、
水くみ人足にあやまりました。
すると、彼は言ったのです。
「道端の花に気づいたかい?
花が君の側にしか咲いていないのに
気づいたかい?
僕は、君からこぼれ落ちる水に気づいて、
君が通る側に花の種をまいたんだ。
そして君は毎日、僕たちが小川から帰るときに
水をまいてくれた。
この2年間、僕はご主人さまの食卓に
花を欠かしたことがない。
君があるがままの君じゃなかったら、
ご主人さまはこの美しい花で
家を飾ることはできなかったんだよ。」
(作者不詳・菅原祐子訳)
