鳥の唄

週末、僕は電車に揺られながら春丘高校へと向かった。


車内は空いている訳ではなかったけど、空いている席を見つけて腰を下ろした。


窓からは海が見える。


霞んでしまっているが、青いところまでは分かった。


「あのー、隣、いいですか?」


ふと振り返るとそこには小柄な女の子が立っていた。


「あ、はい。どーぞ。」


ぎこちなく答えると彼女は笑いながら横に座った。


しばらくは沈黙が続いた。


遠くから聞こえる中学生くらいの声が車内に響きわたっている。


「ねぇ、名前なんてゆーの?」


沈黙を打ち破ったのは彼女だった。


「え…あー、シュウ。秋って書いてシュウ。」


彼女を見るとこっちを見て笑っている。


僕の名前を聞いたら、急に下を向いて何かを考えてる。


「もしかしてさ、秋って秋生まれ?」


閃いたようにこっちを見つめる彼女に、そーだよ。と告げると、やたっ!と喜ぶ声が聞こえる。


可笑しくて、ついつい笑ってしまう。


彼女は頬を膨らませてそっぽを向いた。


それすらも可笑しくてさらに笑ってしまった。


彼女はこっちを向いて僕を睨んだ。