エレファント ロマンス

ポ―――ン……。


エレベーターのドアが開いた。


目の前に明奈の唖然とした顔がある。


「アッキー？」


明奈が８時過ぎにここへ来る約束だったことすら忘れていた。


いつも溌剌としている彼女の顔が徐々に表情を失っていく。


「先生とイチャついてるとこ見せたくて、私を呼んだの？」


「ちが……」


否定する前に、頬にバチンと衝撃が走った。


「最低」


言い捨てて明奈が去っていく。


「あ……待って……」


追いかけようとした体をエレベーターの中に押し込まれた。


その強引さに驚いて先生を見上げた。


「杉浦には明日、僕から釈明しとくから」


「釈明って……」


この状況をどうやって納得させると言うんだろう。


「僕たちが真剣に交際してるってことを、きちんと説明する」


「交際？」


愕然と担任に聞き返したとき、エレベーターが最上階に着いた。


「私、先生と交際するつもりなんてありません」


私の反論は無視され、ウェストに腕を回された。


え？


唖然としているうちに、エレベーターの外に連れ出された。


逃げようにも足元がフラついて、エレベーターホールにとどまることさえ出来ない。


自分でうまくコントロールできない体を、半ば抱えられるようにして、部屋の中に引っ張りこまれた。


必死で抵抗した。


が、体に力が入らなかった。


頭がグラグラする。


もがけばもがくほど、アルコールが体を駆けめぐるようだった。


異常にだるい。


もう無理……。


ふうっと意識が途切れるように、体の力が抜けるのを感じた。