四々綺。
 先祖代々、その家系は「魔術師」の血を継ぎ、そして伝えて来た。四々綺の名が振るうのは、世界構成属性と呼ばれる火、水、風、地。最も基本的な世界構成属性の中の四種を扱える。

 当然俺…四々綺 明神[シシギ ミョウジン]もその力を使える。しかも異常進化という、何やら希少(レア)な事象を引き起こしたらしく、その力は一族の中でもトップクラス。三歳の頃には「当時」最強の親父殿以上の魔力量の持ち主になっていた。

 だが、科学が発展したこの現代現代に、この才能(異常)は過ぎた代物だった。当たり前だ。今の日本で口から鋼をも溶かす炎を吐き出す三歳児は異常なのだ。親父殿は「千年前に生まれていれば英雄だっただろうに」と嘆いていた。まぁ俺はこの時代に生まれた事を感謝しているんだが…パソコンもゲームも無い世界なんてさぞ退屈だろう。そんな世界で六十年以上生きるなんて、地獄の責め苦よりも辛いだろうというモノだ。

「さて…今日は何か面白い事が起きるだろうか…。」

 頭の中には、学校で教頭の七不思議を暴こうとする甲斐野(アホ)達の姿が目に浮かぶ。ちなみに七不思議の内六つは頭髪に関するモノだ。最早不思議でも何でも無いわ。ただのヅラだろうが。

 道中女子生徒の黄色い声に内心鬱陶しさを感じながら(同時に男子生徒の敵意の目線が突き刺さるから)俺は駅へ向かった。親父殿が見栄を張って少々高名、且つ遠距離な高校を選びやがったので面倒ながらも電車通学だ。隣に誰も居ない席を見つけたので座る。

「…あ、あのー…。」
「…ん?」
「と、隣、良いですか?」

 …珍しい事も有る物だ。同じ学校の女生徒に話しかけられるのは、実は結構珍しい。と言うのは、大抵の女子は俺に近付こうものなら他の女子の視線に縮こまったり脅されたり…いや、止めとこう。何だか今も妙な視線を感じる。正直勘弁して欲しい…何が悲しくて俺までその視線を向けられなくてはならないのだろうか。どうせなら今隣に座ったこの女の子のように普通に接して欲しい。

 内心止まる事の無い溜め息を吐きながら、俺は窓から動き続ける景色を見ていたのだった。