嘘つき⑤【-sign-】


恭平さんが、軽く手を振って背中を向けた。ありがとう、と伝えたかったのに、何度言っても足りない、優しい彼が押してくれた背中、


私はゆっくり一歩踏み出す。



もどかしい、


身体が



ドレスが絡んで上手く走れない、



視界が霞んで、愁哉さんが見つめられない、



まだ、理解出来てない、なんて私はどうしょうもない


だけど、瞬間、


長い腕が私の体を引き寄せて、キツくキツく抱き締めた。



駆け巡る熱が、あつい、


ねえ、もう、このまま、壊れてしまいたい。



だって、おかしいんですもの、



思考が上手く回らないわ。