「…俺は、琴ちゃんも好きだけど、あいつも嫌いじゃないからね。」 耳元で優しく囁いて、いっておいで、と肩を押す。 暖かいその手が、何度私を救ってくれたのかしら。 恭平さんが優しく微笑んで、だけど切ない位、真っ直ぐな瞳に、胸が痛い。 私を振り返らせた両腕はポンポンとそのまま背中を叩いて、 「前を向いて」 緩く笑う。いつもの恭平さん、 私は、ゆっくり顔を上げた。