嘘つき⑤【-sign-】


「…俺は、琴ちゃんも好きだけど、あいつも嫌いじゃないからね。」



耳元で優しく囁いて、いっておいで、と肩を押す。



暖かいその手が、何度私を救ってくれたのかしら。
恭平さんが優しく微笑んで、だけど切ない位、真っ直ぐな瞳に、胸が痛い。


私を振り返らせた両腕はポンポンとそのまま背中を叩いて、




「前を向いて」




緩く笑う。いつもの恭平さん、




私は、ゆっくり顔を上げた。