「…なんであんなのがいーかな」 恭平さんの腕が弱まった。優しい声は少し切なさを含んでいて、彼は瞳を細めた。 「俺の方がいい男だし」 軋む感情を見透かすように、恭平さんの口調はおどけてみせる。 「あんな堅物より絶対俺の方が面白いし」 「それに、百倍笑顔でいさせる自信はあるし」 「なにより」 「俺の方が琴音ちゃんを愛してるんだけどね」 そう言って笑った恭平さんを、私はきっと、ずっと、忘れられない。