「…お嬢様?」
部長の低い声が彼女に疑問をこめて向けられる。
「…知っていましたか」
正直、分からない事が多すぎて、だから、部長のその問いの意味は理解出来ない。
「どうゆう事です、か」
声にならない小さな呟きがあたしの口から無意識に零れた後、部長は気にするな、とでも言うように優しく微笑む。
だから、何となく、彼が言う言葉が想像出来てしまうなんて。
「処分は何でも受けます。しかし、彼女は関係ない」
部長があたしに壁を張る。だけど、この壁はいつかの距離を置いたものじゃなくて、あたしを守る為の、ものだ。なんて、今こんな事気付きたくないのに。
ただ、ぼんやり部長の広い背中を見つめながら、霞む視界。
張り裂けそうに、胸が痛くて、バクバクと動く心臓の音だけが耳に響いた。

