海宝堂2〜魔女の館〜

「でも、これ目立たない?」

シーファが身をよじって自分の服装を確認する。
確かに、前の服装と比べるとかなり色遣いも派手で、遠くからでも判別が可能だ。

「ここまでやれば、別人でしょ?」

「そーそー、カツラもかぶってるしな。
それも懐かしいよな~。」

シーファの頭には肩までの長さの金髪のカツラが乗っていた。背中まである美しい黒髪は上手にカツラの中だ。その上、パーカーのフードまでしっかりかぶっている。

テラカイズ島で出逢った時、身分を隠したいシーファは今と同じ様に金髪のカツラをかぶっていた。

「アレがカツラだって分かった時はびっくりしたよな~。」

「おい、しゃべってる暇はないぞ。見つからないうちに聞きこみを済ませるぞ。」

気が緩んだのか、またも思い出話をしようとするリュートを、ガルが低めの声で制する。
が、そういうガルもシーファの姿に、あの時の事を思いだしていた。

初めてだった。自分の料理好きを変だと笑わなかった人は。
そして、出逢ったばかりの人の言葉に、心が楽になったのもまた同じだった。
あの時は想像もしていなかった、こんな風に一緒に旅をすることになるとは。

ガルはそんな事を思って、ふっと短い笑いを漏らした。