「はぁ〜あ〜。」
すると、頭上で重々しいため息が聞こえた。
「本当に最近まいることばかりだな。どうせ、てこでも動かないんだろう?」
もう呆れ切ったような声で先生が言う。
「聞いてくださるんですか……?」
……本当に…?
私はゆっくり顔をあげ、先生の表情をうかがう。
相変わらず、顔をしかめ、眉間には深い皺が刻まれている。
――だけど、さっきの言葉は……?
「ただし、少しだけだ。話したら、とっとと帰るように!」
……いいの…、本当に…?
「……あ、ありがとうございます!」
ワンテンポ遅れてやっと理解できた私は、心から先生にお礼を言った。
――そして、先生は手近な空き部屋に場所をうつし、私は全てを話した。
理香の目撃証言があること、
和也君は私のために怒ってくれたのだということ、
先に手を出したのは先輩だということ。
先生の言うとおり、なるべく手短に、
でも、大事なことは一つももらさないように――。
「状況はよくわかった。私から話しておこう。だから、もう今日は帰りなさい。」
話を聞いてくれた先生は落ち着いてそう言う。
「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします。」
――どうか、和也君が大丈夫でありますように――。


