結局、弱虫な私は何も言い返せず、庇ってもらうだけ……。
周りを囲んでいた生徒たちは、冷めた視線と言葉を残し、散々に去り始める。
私に唯一できたことといえば、涙を堪えられたことぐらい……。
情けないなぁ。
その刹那、茫然とする私の目の端に、ある人がうつったんだ――。
人の群れに紛れてしまったから、一瞬しか見えなかったけど、それは見覚えのある姿だった。
他の人とは、放っている雰囲気が全然違う。
とても冷酷な表情とはアンバランスに、すごく悲しそうで切なそうな瞳をしていたんだ――。
何で、あんな目を……?
私の記憶に強く焼き付いてはなれない――。
「――先輩、―――折原先輩。大丈夫ですか?」
その声に私はふと我に返る。
気付けば、そう呼び掛けながら私の顔を心配そうに和也君が覗き込んでいた。


