「いえ、そんなのいいんです!」


和也君は首を横に振ってそう言うと、伏し目がちにこう続けた。


「俺、ついあんなこと言っちゃって……。実際に陸人さんに会って、幸せそうにしてる折原先輩見てから、陸人さんに余計嫉妬しちゃったんです。ホントに、すみません。」


嫉妬……?


「う、ううん…。」


……なんて言ったらいいのかわからなくて、これしか言葉が出てこない。



「でも、俺、折原先輩のこと大好きなんだって実感しました。」


いつもの太陽のような笑顔から唐突に発せられた和也君の言葉――。


気付くと私の頬はあつくなっていた。


すごく自然で、他の男の子とはなんだか全然違うんだ――。


「今はダメだったとしても、俺絶対に先輩に振りむいてもらえるようになりますから。」


少し頬を赤くしながら和也君が言う。


そんな和也君の言葉に、つい胸はドキッとし、頭はちょっぴり混乱中。


「じゃあ、また明日学校で!」


和也君は軽く頭を下げると、元気に手を振り、風のように去っていってしまった。


いつも和也君にペースをくるわされちゃうんだよね。


私はそう思いながら笑った。



――でも、こんな時間はつかの間だったんだ。


油断していたのかな……。


私はまだ知らなかったの、安心していられる時間にもうすぐ終わりが来ていることを………。