――今日もバイトが終了し、私はいつものように渡辺書店の裏口から外へ出た。
上を向くと、建物で細く切り取られた空が見える。
曇ってるのかな……。
星一つさえ見えない。
でも、どうにか天気は持ち堪えてくれたようで、念のため持ってきた傘とレインコートは必要なかったみたい。
私は自転車に乗るより先に、ケータイをチェックした。
待受画面には何のマークも出ていない……。
陸人、そんなに忙しいのかな?
着信が残ってれば、陸人なら電話かメールくれそうなのに………。
小さくため息をついた。
私は、マナーモードを解除したケータイを入れたバッグを自転車につみ、この場を後にする。
このさみしい商店街に、スタンドを外す音だけを残して――。
そして、今夜、ケータイの着信音を耳にすることはなかった……。


