私は思わず俯いた。
「……さやか、渡したいものがあるんだ。」
………何だろう?
ゆっくりと私は顔を上げる。
陸人は手をほどくと、おもむろに黒のショルダーバッグから白い立方体の箱を取り出す。
私はその箱をそっと受け取った。
「あけてみて。」
陸人にそう言われて蓋をとってみると、中に入っていたのは、細い茶色のベルトの腕時計―――。
「…覚えててくれたの?」
前のは電池が切れちゃってたんだ……。
ちょっと話しただけなのに覚えててくれたんだ――。
私が聞くと陸人は少し照れ笑いした。
「どういうのがいいかわからなくて、随分迷ったんだ…。気に入ってくれたか?」
陸人はそう話しながら、私の左の手首に腕時計をつけてくれた。
「もちろんだよ。ありがと。大切にするね。」
右手でやさしく腕時計に触れる。
シンプルなデザインで、陸人らしいなぁ。


