私は部屋を出て鍵を掛けると、もう一度腕時計に視線を移した。
そして、陸人のことを思い出しながら、愛おしく指で時計を撫でる。
こうしていると、
陸人からこの時計をもらった日が――、
陸人に笑顔で送り出してもらった日が――、
ついこの間のように色あせることなく、
よみがえるの―――。
…あれは、住み慣れた場所を去る日だった……。
私は段ボールの箱がいくつか積んである、殺風景な部屋の隅に小さくなって座っていた。
将太はここを出るのがさみしくて泣き、お隣のおじさんとおばさんのところへ行っていて、この部屋には私1人。
私は、もう何の面影もなくなってしまった家族4人で住んでいた部屋を、目に焼き付けていた。
もうここともお別れ……。
そして、陸人にもあまり会えなくなる………。
本当はここに残りたいよぉ―――。
ここを離れる時間は刻一刻と近づいて来ているのに、私の心はそんな感情で埋め尽くされていく…。


