―――夜の7時をすぎ、今日は休もうと一度は思ったけれど、無事バイトを終えることができた。
店を閉めて、渡辺さんに挨拶をしにいく。
奥からは美味しそうな匂いが漂ってくる。
奥にある部屋を覗くと台所に立つ渡辺さんがいた。
「渡辺さん、お店の戸締りしました。あ、何かいい匂いがしますね。」
「あぁ、お疲れ様、さやかちゃん。煮物作ったんだ。持っていってくれるかい?」
渡辺さんは私の方に歩いて来て、じゃが芋の煮物が入ったタッパーを渡してくれた。
「ありがとうございます!私、渡辺さんの作った煮物好きなんですよ。弟と一緒に食べますね。」
渡辺さんの煮物何回か食べたことあるけど美味しいんだよなぁ。
私は笑顔で頭を下げた。
「そう言ってもらえて嬉しいよ。じゃあ、気をつけて帰るんだよ。」
「はい。」
そして、タッパーをバッグに入れて、裏口のドアから渡辺書店を出た。


