「そんなに心配しないでよ。アイツらビビってたし。」
将太はニヒッと歯を出して笑いながら、右手の親指を立てた。
あんなに心配してたのに、張本人はこんなに余裕な顔しちゃってさ…。
私はすっと立ち上がり、そっぽを向いて将太の頭をグシャグシャッと撫でる。
「やめてよ、姉ちゃん!」
「まぁ、よく頑張ったわね…。」
あの時とは違うあたたかい嬉し涙がこぼれそうで、それを隠しながらぶっきらぼうにそう言った。
「変な姉ちゃん。じゃあ、俺帰ろうかな。和也兄ちゃん、ありがとな。」
「今度はお姉ちゃんに一番に報告するんだぞ。先輩すみませんでした。」
和也君は眉を下げ、申し訳なさそうに私に謝る。
「あっ、いや、和也君が謝ることじゃっ。む、むしろ、感謝するのはこっちの方でっ。」
私は涙をさっと拭い、しどろもどろになりながら言った。
「そうだよ。口うるさい姉ちゃんのことなんか気にすることないから。」
アハハと笑う将太に私はもう一発頭をぺしっと叩いた。
そんな様子を見て、和也君はクスッと笑う。


