カチッ…カチッ…
部屋には壁にかかっている時計の時間を刻む音だけが響いていた。
もうこれ以上待っていることはできない……。
そろそろここを出ないと、バイトに間に合わないから。
私は重い気持ちのまま、部屋を出ると鍵をかけ、バイトに向かうことにした。
ギリギリまで待ったけど、将太が帰ってくることはなかった―――。
私は重いペダルをこぎ、渡辺書店へと自転車を進ませる。
流れる風景はどこか味気なく、空は白い雲で埋め尽くされていた。
ため息ばかりが出る。
私、今日こんなんで仕事できるのかな…?
渡辺さんには申し訳ないけど、今日は休もうかなぁ…。
私はそう思い、ブレーキを握りキィという音とともに歩道のわきに止めた。
自転車に乗ったまま片足を地面につけると、バッグからケータイを出し、電話帳を開いて渡辺書店の文字を捜す。
すると、微かではあるけど、どこからか聞き覚えのある声が聞こえた気がした。
私は手をとめ、耳を澄ます―――。


