でも、何であんなに陸人の名前を心の中で叫んじゃったんだろ…?
この街にいるはずもないのに。
会いたいよ、陸人―――。
いつのまにか涙が零れてきた。
「姉ちゃん、遅かったじゃん。」
振り向くとパジャマ姿の将太が立っていた。
「あっ、ちょっと仕事長引いちゃってさ。」
私は急いで涙を拭いて、笑顔を作る。
「…何かあった?」
まるで見透かされてるみたいだった。
姉弟だもんなぁ。
「珍しいわね、心配してくれるなんて!ほら、遅いから寝な。」
私は明るくふるまい、将太の背中を押す。
「じゃあ、おやすみ。」
将太はそう言って寝に行った。
落ち込んでいる場合じゃないよね。
将太のためにも自分のためにも。


