「奈々花ちゃーん、ね?いいでしょ?」


「私は…」



教室へ戻ろうと廊下を歩いていると聞き覚えのある名前と声が耕平の耳に入ってきた。



「後夜祭、俺と一緒に出て?」



構わず歩いていくと、耕平の目に男に迫られている奈々花が映った。



後夜祭に一緒に出るという事はこの学校では付き合っている事を意味していた。

つまり、その男は奈々花に告白の真っ最中という事になる。



男は慣れた手つきで奈々花の黒い綺麗な髪を弄ぶ。

免疫のない奈々花は固まって、しゃべる事も動く事もままならないでいた。