あんなにも思ってくれる櫂智より、あたしには大切な人。 「浅岡じゃん」 「圭吾」 下駄箱で靴を履き替えていたあたしに、“よっ”と言いながら駆け寄る人影。 飯田 圭吾。 あたしの片思いの相手だ。 「浅岡は、また読書か?」 「またって、何よ」 少しプクッて頬を膨らますと、圭吾が“ははっ”と笑った。