そして調査開始から一週間。
捜査はなんの進展もないまま、陽矢が殺害されて見付かったという痛ましい結果が起こってしまった。


 誘拐事件と見て動いていたが、身代金の要求や脅迫などがないばかりか、犯人からのアプローチ自体が何もなかったのだ。


 殺害されたことにより、これからより一層怨恨の線を洗い出すことになるだろうが、榛瀬家に対して恨みを持つ者の特定も出来ていなかった。


 ご近所とのトラブルや職場でのいざこざも見当たらない。


 聖人君子なわけではないが、幼い子どもを殺すほど恨みを持っている人物もいるようには見えなかった。


 犯人への手掛かりとして風間と羽田の聞き込みでわかったことは、保育園から連れ去ったのは何処にでもいそうな印象の薄い、30代くらいの女性であったこと。


 服装は定番な型のベージュ色のコートに、寒さから口元を隠すかのように覆われたチェックのマフラー。

 そんな服装の女性は町を歩けばいくらでもいる。
特徴からは手がかりらしい手がかりは掴めなかった。