掴み掛からんばかりの和枝の剣幕に、今度は保育士が青くなった。
「え……!?
待って下さい! 事故に遭ったのは旦那さんですよね?
さっき親戚の方が迎えに来たとかで『父親が事故に遭い母親は病院に向かったから、代わりに迎えに来た人に引き渡した』ってゆうこ先生が……」
和枝の世界が暗転した。
その場に崩れ落ちそうになった和枝を支え、ゆっくりと屈ませた保育士は、大声を上げて園内にいる先生を呼んだ。
園内から何事かと数人の先生が顔を出し、和枝が蒼白な顔で座り込んでいるのを見て、手を貸そうと表に出て来る。
そのなかに、和枝のよく見知った顔があった。ゆうこ先生だ。
ゆうこ先生は、まだ残っていた児童の相手をしていたらしく、手に絵本を持っていた。
その姿が視界に入った途端、和枝はすがり付くように駆け寄り、先生の両腕をしっかりと掴む。
袖が千切れそうなほど力を込められたことよりも、ゆうこ先生は和枝の言葉の方に驚いたようだった。



