その言葉を待っていたのか覚悟していたのか、長く息を吐き出した八重子は、掠れた声で話し始めた。
「いつ来るかいつ来るかと怯えてました。
刑事さんの仰る通り、陽矢くんを連れ出したのは私です」
いやにあっさりと話し出したと思ったら、日々うなされているのだと溜息して告げた。
「私は子宝に恵まれませんでした。それは夫に原因があったんですけれど。
だから子どもを邪魔にするかのように、浮気のために保育園に預ける和枝さんが許せなかった。
そんなに邪魔なら私が育てよう、そうしたら夫も家に帰って来るようになるかもしれない。そう思ったんです。
今思えばそんなことあるはずないのに、頭がカーッとなってしまって……」
そらされた八重子の視線を辿ると、真新しいカラーボックスがあった。
引き出しのように入れられた箱に向かって立ち上がった八重子は、その中から車のオモチャを取り出して目を伏せる。
「私の身勝手な思いで陽矢くんを連れて来なければ、陽矢くんは死なずに済んだのかもしれません」



