数回のコールのあと出た陽平に、前置きもそこそこに本題へと入る。
もちろん花菜のことに関してであった。


 課長の話だと、親戚は海外に旅行へ行っており、連絡がつかないらしい。
その間だけでもと引き取ったそうだが……


「佐藤勝さんの子をお引き取りになったそうですね」

『ええ。歳も陽矢と近いですし、同僚の子が孤児になるのは偲びないですから』

「それにしても随分急じゃないですか?」


 親戚でもないのに、どうして引き取る必要が?
本当に花菜を思ってのことなのだろうか。


花菜にしてみれば、あと一週間程待っていればいいだけなのに。


『署にいては休まらないと思い、1日でも早いほうがいいかと。
すみません、失礼します』


 唐突に会話を切り、受話器を乱雑に置かれた音がして、風間も受話器を置いた。


 もちゃもちゃと髪を掻き回すと、八つ当たりするかのように拳を机に叩きつける。


 一方受話器を置いた陽平は、傍らで遊ぶ花菜を見て複雑な顔をしていた。