(KS)ハルカナセカイ



 翌日、風間は榛瀬家のチャイムを鳴らしていた。


 榛瀬家は静まり返り、誰もいないかに見える。


 木霊のように家の中に微かに響いたチャイムの音が止むと、玄関の中を照らす明かりが灯り、静かにドアが開いた。


「何度も恐縮です」


 風間がそう切り出すと、のそりと陽平が顔を出した。


「ちょっとお話を……」


 またですかとも何も反応はなく、ただ家の中へと招き入れる。


 態度だけは小さく取り繕いながら、家の気配を素早く探る。


「あの、奥様は……?」


 体調を気遣うのが半分、所在の確認をしたいのが半分。
そのつもりで尋ねた風間の言葉を、陽平は心の中で曲解したが、もちろん風間にはそんなことはわからなかった。


「家内が何か?」


「いえ、寝ていらっしゃるのですか?」


「……実家に帰らせました。
子どもと一緒です」


「ああ、和葉さんでしたかな?
ということは奥様のご実家ですか。
失礼ですが奥様はご実家どちらでしたかね?」


「……やっぱり家内は……」


「え?」