風間の部下である羽田(はねだ)が、メモを見ながら丁寧に陽平に説明をしている。
榛瀬 陽平(ようへい)の長男、陽矢が行方不明になってちょうど一週間。
地方銀行に勤務している陽平と、違う金融機関でパートをしている妻和枝(かずえ)の間に産まれた陽矢は、まだ三歳だった。
二人の間には他に和葉(かずは)という7歳になる長女がおり、陽矢の姉にあたる少女は今、和枝の両親のところへ預けられていた。
「私のせい……私が悪いの……ごめんなさい陽矢……パパごめんなさい……」
羽田の説明の後、しゃくりあげながらそう溢す和枝に、夫の陽平は気遣う素振りを見せながら、しかし何も言わなかった。
沈黙の中、己を責め慟哭する和枝の、微かな声だけが虚ろに響く。
こういう場面には何度か遭遇しているはずの風間も、咄嗟に気の利いたことを言うことが出来ずに、視線を落とす。
和枝が自分を責めるのには、理由があった。