それなのに。
無惨に奪われてしまった。
勿論それが和枝のせいだなどとは思っていない。
だがあの日から毎日のように、どこの誰と会っていたのかと尋ねても一向に要領の得ない答えに、多少苛立っているのも事実だった。
保育園に預けて一人の時間を過ごすことは賛成だったし、誰かと会っていたにしてもそれを責めるつもりは毛頭ない。
しかし和枝の閉ざした口は、それを責められるのを極端に恐れているような雰囲気でもなく、だから何故黙っているのかが陽平にはわからなかった。
それにこれだけ頑なに沈黙するからには、何か理由があるはず。
そしてそれはもしかしたら、刑事たちの言って来たあの二人に関することなのではないか?
そもそも刑事たちがわざわざ再びうちを訪れたのには、何か訳があるはずだ。
もしかしたらそれは、和枝の会っていたのが、二人のうちのどちらかだったからではないのか?
自分が知らないだけで、刑事たちは調査してわかっているのかもしれない。
つまり妻は、二人のうちのどちらかと浮気をしていたのではないだろうか。
それなら話は変わってくる。



