(KS)ハルカナセカイ



 風間たちが帰った後、陽平はゆっくりと家の中へと入り、そっと妻が横になっている寝室へと向かった。


 金田が殺されたことに多少動揺している。
金田は銀行の金を横領しているようだったのだ。
決定的証拠が無かったから支店長には言えなかったが。

 佐藤は金田の地区を担当していたから、顧客から問合わせなどがあり、金田に追及したのではないだろうか。

 そんな考え事を一時追い払うと、ノックもせずに静かにドアを開けた。


 音を立てないように入ったつもりだが、気配でわかったのか小さな音がしたのか、和枝は寝返りを打つかのように緩慢な動きで、近付く陽平を見ていた。


「起こしたか」


「いえ」


 若干のよそよそしさを感じさせるような物言いなのは、果たしていつからだったろう。


 仕事仕事で家庭を顧みることが減り、いつしか妻との間に溝が出来てしまって、どう接していたのかすら既に思い出せない。


 その溝を見た目だけでもなんとか埋められていたのは、和葉と陽矢という二人の幼い子どもたちのおかげだった。


 とりたて陽矢は男同士の固い絆のようなものを感じていたのに。