「検死は誰が?」


「えっと今日の当直は笹木と松山でしたね。
法医学の先生は確か横谷先生ですよ」


 加速した車の座席に押し付けられる感覚に、風間は身を任せながら車窓へと目を向ける。


「笹木と松山か……
確か松山には幼稚園に上がったくらいの女の子がいたよな?」


「──そうですね。
それに笹木は学校卒業したてで、まだ検死経験はなかったと記憶してます」


「……そうか」


 重苦しい空気が二人の間を流れた。


 検死は法医学の医師の立ち会いのもと、当直の警察官が執り行う。


 一人は初めて、一人は被害者と同じくらいの子持ち。
選べる仕事ではないが、それでもやはり幼い子の検死というのはこの仕事の無情さを感じ、やりきれない気持ちになる。


 沈んだ空気を乗せたまま、車は署へと向かって走り続けていた。