「じゃ、お願いね。ただの練習試合。あなたが打たれたら、外周50周するだけだから、気にしない気にしない」
軽い口調で笑う監督。
少し盛り上がっているマウンドに立つと、相手チームから失笑が起き、花村に促されるまま投球練習をし、ボールがすっ飛んでいくと、笑い声がドッと湧き上がる。
「部長!リラックスです!テコンドーと同じ‼」
副部長に励まされる。
そうだ、テコンドーも拳を突き出す寸前まで、肩の力を抜かなくてはいけない。
フゥ~と息を吐き出し、肩を何度が回してから、振りかぶった感じ?でボールを投げた。
真っ直ぐ、花村のミットに突き刺さるボール=ストライク!その速さと正確さに、誰もが息を飲むのが分かった。バッターが構え直し、本気になったのも。しかし、集中して腕を振り下ろし、空振りでツーストライクまで追い込む。
「よし‼」
気合いを入れるわたしには聞こえなかった。野崎の呟きが。
「あの子、性格と同じで、真っ直ぐしか投げれないのよねぇ。あ、ほら打たれた」
バットにジャストミートしたボールは、ライト方向へ。懸命に下がる悠太。だが間に合わない!
頭上を越えるボール。
その時、悠太が飛んだ‼
砂埃が舞い上がる中、悠太がゆっくり立ち上がる。
その左手は、高々と天に突き上げられ、グローブの中には白球が見えた。
ゲームセット‼
歓声とともに、駆け出す部員たち。二塁辺りで互いに抱き合い、喜びを分かち合う。が、
「あ、わたし時間ないんだ」
「部長、デートですか?」
そう、デートだ。今度こそデートなんだから!



