「悠太~‼」


わたしは手を振った。


自分に初めて声をかけてくれた悠太に。


正確にいうなら、声援を送った。ここは学校のグラウンドだ。


悠太の守備はライト。


試合は8回の裏ランナー一塁、1対1で1打逆転のチャンス、緊迫した場面だ。


「あら細井さん、あなたも観に来たの?」

「あ、野崎先生。いい試合ですね」

「ここを守ればチャンスありよ。次の打順は2番からだし」


と、なかなか詳しい。


試合に目を戻すと、ピッチャーが振りかぶって、投げた!


「あ!」


一塁ランナーが飛び出した‼


スパン!とキャッチャーミットにボールが吸い込まれた音がすると、屈んでいたキャッチャーが立ち上がり(や、山が動いた!)、二塁に向かってボールを突き刺す。


ランナーアウト‼


まだまだベースと距離がある相手チームのランナーが、唖然としている。


「すごいキャッチャーですね…?」
(あれ?どこかで?)


「よく見なさいよ、部長さん」


隣で笑う野崎。


や、やっぱりあれは、我が部の?