海風が心地良い。


「待った?遅れてゴメン‼」


「僕もさっき来たばかりだから」


そう優しく答えるのは、


……


……


……


小林実だった。


あの小林君だ。


わたしの一番の理解者であり、いつも側でなにも言わずに励ましてくれた、心が広く、じつは強き男。


海で待ち合わせをし、浜辺をのんびり歩いてデートを…。


「じゃ、柔軟しましょうか?」


「うん、そうだね」


互いに押し合う。


背中や肩、足を持ち上げ、


確かに実のカチカチの筋肉に触れるのには、まだわずかな抵抗があるのだが、そうは言っていられない。


テコンドーデート。


いやいや、そんな生易しいものではない‼


「細井さん‼もっと強く!そんなんじゃ優勝できないよ‼」


ミットを構えた実がゲキを飛ばす。


試合が明日に迫ってるのだ‼