「ですけど!なんだかダイエットしてる気がしないんですよ。ご飯を我慢してイライラすることもないし、運動しなきゃいけない!って感じでもない。それなのに、少しずつだけど確実に痩せてく。こんなんでいいのかな?ってたまに不安なくらい。でも楽ちんだし」


「それが簡単そうで、簡単やないんよ。人間はすぐ結果を求める。一年間、続けるっていう、地味な根性がないと」


「ゆっくり痩せると、もう元には戻らない感じがするんですよね」


「体にも優しいしね。あんたも、ようやくダイエットっちゅうもんが分かってきたやないの」


「おかげさまで」


「てか、今更やけど、あんたなんで、そない変わったもん着てんの?」


「いえ、いつかダイエットと組み合わせようかな、と。それに………」


「なんやの、女の子みたいに恥ずかしがって」


「今からデートなんで」


「え~っ‼‼‼」


「いちいち、わざとらしいですよ」


「道着を着てデートって、どないやの」


「人間は中身ですから」


「なんやえらっそうに。ま、もう真琴は大丈夫やで。まだ一年経ってへんけど、もう太ることはない。歩くことだけやめへんかったら、ちょっとくらい食べすぎようが、どうってことはない。あんたの体は、どんどん太りにくくなってくから。明日からは一人でも大丈夫。正しいダイエットがなにかって、あんた自身が一番分かってるはずやから。今日で卒業や」


「卒業…」


「真琴、あんたホンマによう頑張ったな」


「……」


「あんた、めっちゃキレイになったで」


チエがにこやかに笑っている。


自然と笑みがこぼれた真琴は、大きな声で、


「おおきに!」